「心」を論述するヒント
課題文に書かれている筆者の見解に対する理解や、そこに提示されている問題点の読み取りに関してもずれが生じてしまうことに繋がりかねません。
例えば「物質的な豊かさが急に増加してきた現在、心という点で非常に貧しくなってきているので、心を大切にすることに努めねばならぬ」という、世間一般の人々の心についての捉え方に対して、筆者は疑問を投げかける形で論を展開していくような課題文が出題させることもあります。
「昔はもっと心を大切にしていたのに、現代は心の問題を忘れたり、心を軽視したりする傾向が強い」と嘆く人も多いのですが、昔の方がよかったと過去にばかり囚われていたのでは、こうした心の問題を解決することも難しいように思われます。
「心の時代」だからと、現在の繁栄をもたらした経済や自然科学の成長を軽んじ、物ではなく、心こそが大切なのだとする二者択一的な考え方についても、否定的に捉える主張もあります。
あなたは、心と物の関係をどのように捉えるべきだと思いますか? そのあたりをはっきりさせることで、そうした見解とそれに対するあなた自身の考え方の差異についても、明確に示すようにしましょう。
論点を明確にしてから文章化する
物質的豊かさを望み、努力し、それを大成したのが現代人なのだから、今になって心こそ大事なのだからと、自らが求めたはずの物質的な豊かさを蔑視することは、まったくばかげたことであると考えることもできるでしょう。
昔の人と価値観(望むもの)は異なるものの、現代人が何も望まなくなったわけではないから、現代人の心が貧しくなったわけではないと主張することもできます。
あるいは、現代人の心は確かに貧しくなってきてはいるが、それは、物質的に豊かになったことが原因ではなく、「受身の態度」にこそ原因があるのだと主張したくなるかもしれません。
いずれにせよ自分の考えを十分に整理して、読み手に分かりやすい表現で自論を展開することが大変重要です。
結論部分にスムーズにつなげるためにも、結論との関連性を十分に考えた上で、論点を明確にしてから文章化することを心がけましょう。
心のより所をどこに求める
科学技術の発達や、経済活動の急速な発展によって、私達の身の回りの物が豊かになり、便利な生活を送れるようになったが、人間の心はそれに似合うだけの豊かさを得ることが出来たのか、という疑問はありませんか?
本来の「心」は、物が豊かになりすぎた感のある現代において、どうして人を信用できなくなったり、自己中心的になったりしてしまったのかを考えてみましょう。物質はすべてにおいて便利で合理的で画一的ですね。それに対して人間の心は複雑で、多様性に富み不明確です。人を信用できなくても、物や機械、あるいは科学的に証明のできる事柄だけは信用できるとしたら、人の心はどうなるのだと思いますか? 事実、対人関係がうまくできないために社会生活に支障が出て、人格に問題のある人間も増えていますし、それに関連した犯罪も増えていますね。このような「心の問題」をも念頭に入れて、「心のより所」をどこに求めるかを深く追求してみるといかがでしょうか?
一人一人が「心」の定義を持ち、信念を持って守るだけでなく、社会全体の共通の認識を持ち、お互いの心を守っていくにはどうすれば良いのかと、もう一歩分析を進めてみましょう。
「本来の人間の心とは?」、「なぜこの様なことが起こるのか」、「どうすれば心を大切にできる人が生まれるか」、「人の心とはどの様な物なのか」等々と、自問自答を繰り返してみましょう。「心」は、人間同士の思いやりとか、互いに助け合ったり高め合ったりすることのように理解しているようでは不十分です。そうしてしまうとちょっと「心」の定義としては狭すぎるようです。「心」を人間の精神活動全般を意味するものとしているほうがようでしょう。
誰でもが持っているはずの素朴な「情」を、その人なりの「信念」にまで高める作用こそ「心」なのだ、ということでしょう。
課題のテーマをはずしてしまうことのないように、最初に課題文をじっくり読んで、何を言おうとしているのかをしっかり理解することが大切です。本番では、テーマからずれている論述と判断されると、大幅な減点となりかねませんので注意が必要です。
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